登山コース地図の作り方

次のような登山コース地図を作るとしよう。


尾開山の登山コース図

この地図は、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図50000(地図画像)を複製したものである(承認番号 平23情複、第37号)。


このような登山コース地図を作る場合、幾らかの疑問が生じる。 知ってしまえば何でもない情報であるが、自分で調べるとなると意外と時間がかかる。 そのような情報の提供に焦点を置きつつ、登山コース地図を作る一連の流れを説明しよう。

次の2つの作図手法に分けている。

主として第1の手法を説明し、最後に第2の手法を簡単に説明する。


画像編集ソフトを利用する一般的な手法

画像編集ソフトを利用する一般的な手法であっても、ここで説明するのは、あくまでも一つの作り方であり、様々なバリエーションが考えられる。したがって全体的な流れに注目して欲しい。 それぞれのステップにおいて「何をするのかといった目的」が理解できれば、そのための手段がいろいろ考えられる。 ここで説明する作図手法において、一つの重要な点は無料地図ソフト「カシミール3D」の利用である。


なぜカシミール3Dを使うのか

まず、カシミール3Dを利用する理由を説明しておこう。 登山コース地図に適した地図画像を地図ショッピングサイトから購入し、その付属ソフトを使って地図画像を表示しても、地図画像が別々にしか表示されない。 カシミール3Dは多くの地図画像を連結してシームレス(切れ目なし)に表示し、あたかも巨大な地図を見ているようにする。 この機能は「地図画像合成機能」と呼ばれており、登山コース地図を作る場合には極めて便利である。 例えば冒頭に示す地図範囲が複数の地図画像にまたがっている場合、複数に分かれた登山コース地図を作りたくないはずだ。 地図画像合成機能がカシミール3Dを使う最大の理由である。 その他にも、様々な便利な機能が備わっていること、初期の色設定も地形図として普通の色合いであること、等々の理由もある。 数値地図の付属ソフトは初期の色設定が特異であり、いろいろ変更を試みたが、思うような色合いの地図にすることが出来ず、あきらめた。

カシミール3Dに関する基本的な情報は、次のページから得ることが出来る。


地図の準備

ここでは登山コース地図用の原図を得る前の「準備」を示す。次の2ステップからなる。

ステップ1:地図画像を入手する

実際の登山に携帯する紙媒体の地図は、2万5千分の1のスケールのものを使うことが多い。 一方、インターネットや山行記録集へ掲載するデジタル地図であれば、5万分の1ぐらいのスケールが適切であろう。 このようなデジタル地図は「数値地図」と呼ばれており、2万5千分の1地形図は「数値地図25000(地図画像)」、5万分の1地形図は「数値地図50000(地図画像)」といった名称になっている。 したがって入手する地図画像は「数値地図25000(地図画像)」と「数値地図50000(地図画像)」に限定して考えれば良い。 これら両者の間の選択については、地図ショッピングサイトのところで追加情報を提供する。 数値地図に関する詳しく情報は次のウェブページから得ることができる。

このような数値地図(地図画像)を地図ショッピングサイトから購入する。ただし、CD-ROM版を買うこと。そうすればカシミール3Dへインストールすることができる。

ダウンロード版を購入した場合はどうなるのだろうか。私のコンピューターに入っているカシミール3Dを調べた限りでは、ダウンロード版をインストールするような機能はなかった。

ステップ2:地図画像をカシミール3Dで利用できるようにする

カシミール3Dを起動し、「ファイル」→「数値地図(地図画像)CD-ROMのインストール」へと進み、インストールを実行する。 インストール後は、CD-ROMからインストールした地図が表示される。

使用する地図セットを切り替える場合は次のようにする。「ファイル」→「地図を開く」へと進み、希望の地図セットを選択する。 前述のCD-ROMからインストールした地図セットは、「その他」のセクションに入っている。


登山コース地図の作成

ここでは登山コース地図を作る情報を示す。登山コース地図を作るたびに繰り返す作業であり、そういった意味で前述の準備と異なる。大きく分けて次の4ステップからなる。 (1)カシミール3Dを利用して必要な部分を取り出す。(2)丁度の寸法の地図画像をつくる。(3)その地図画像に追加情報を書き加える。(4)必要であれば画像サイズなどを変更する。

ステップ1:必要な部分を取り出す

カシミール3Dを利用し、登山コース地図の原図となる地図画像を得る。具体的には次のような手順を踏む。

  1. カシミール3Dを起動して地図を開き、目的とする場所を表示する。
  2. 「編集」→「選択範囲を決める」へと進み、マウスを使って矩形の選択範囲を決める。このときの選択範囲は最終的な表示範囲よりも大きく設定する。後で述べるトリミングの関係から、このようにする。
  3. 「編集」→「選択範囲のコピー」を選び、選択範囲をコピーする。
  4. このようにしてコピーした選択範囲をファイルとして保存する。そのためのソフトとしては、いろいろな画像編集ソフトが考えられるが、Windowsの標準付属ソフト「ペイント」を使っている。 ペイントを起動して白紙を開いた状態において「編集」→「貼り付け」を選び、コピー地図画像を貼り付ける。「上書き保存」や「名前を付けて保存」を選び、例えば「map_original.jpg」といったファイル名で保存する。これを便宜上「原図ファイル」と呼ぶことにしよう。画像形式はJPEG形式やPNG形式が適切であろう。JPEG形式とPNG形式との適材適所的な選択は地図の画像形式が役立つかも知れない。

選択範囲をファイルとして保存することはカシミール3Dでも出来る。「ファイル」→「表示画像を保存」→「選択範囲を保存」へと進み、選択範囲をファイルとして保存する。しかし、ビット形式としてしか保存できず、ファイルサイズが飛躍的に大きくなる。 これは登山コース地図をインターネット上で公開する場合には重大な欠点となる。ビット形式で保存しておいて、登山コース地図が完成した時点でJPEG形式やPNG形式へ変換する選択肢もある。

ここまではカシミール3Dを使うことを前提として話を進めてきた。その他の手段を使った場合でも、必要な部分をコピーした原図ファイルを得る。


ステップ2:丁度の寸法の地図画像をつくる

ステップ1で作った原図ファイル「map_original.jpg」は1000x750といったような丁度の寸法になっていない。一方、インターネット上に掲載する地図画像は横・縦のサイズが例えば1000x750といったような丁度の寸法にしたい。 そこで元の地図画像から丁度の寸法の地図画像をつくることを行う。そのような作業が容易な画像編集ソフトがある一方、そうでない画像編集ソフトもある。 このような作業は無料ソフト「GIMP2」で行っている。 したがってGIMP2に基づき、作業ステップを示す。

  1. GIMP2を起動し、原図ファイル「map_original.jpg」を開く。
  2. 「表示」→「ズーム」へと進み、地図画像を100%の大きさで表示する。
  3. メニューから「Rectangle Select Tool」を選び、かつ画面周辺のスケールを利用し、例えば1000x750といった丁度の範囲を設定する。矩形の選択範囲を設定した後においても、選択範囲の一辺をマウスで動かすことにより寸法を微調整することができる。
  4. 「編集」→「コピー」へと進み、選択範囲をコピーする。
  5. 「ファイル」→「新規」を選び、新規ファイルを作る。そのための画面では画像サイズを設定する。コピーした選択範囲が1000x750であれば新規ファイルの画像サイズも1000x750にすることは自明であろう。そして新規ファイル名は「map_1000x750_ini.jpg」といった具合に画像サイズを記した名前にしておくと便利である。このファイルは便宜上「作図前ファイル」と呼ぶことにする。

ステップ3:地図画像に追加情報を書き加える

画像編集ソフトを用い、地図画像に登山コースや文字情報などの追加情報を書き加えるステップである。 そのための画像編集ソフトは「GIMP2」でも良いが、Windows標準付属ソフト「ペイント」を使うことが多い。

作図を「ペイント」で行う場合、文字の書き込みではディフォルト(初期設定)と異なった文字サイズや書体へ変更したいと思うことが多い。 その場合は文字入力欄が開いている状態で右クリックを用い、「書式バー」を選べば文字サイズや書体を変えることができる。

  1. 作図前ファイル「map_1000x750_ini.jpg」を開き、「map_1000x750.jpg」といった別名で保存する。この新規ファイルを便宜上「作図ファイル」と呼ぶことにする。作図ファイル「map_1000x750.jpg」において登山コースを描く。
  2. 登山コースを描くのに失敗した場合は、再び作図前ファイル「map_1000x750_ini.jpg」を「map_1000x750.jpg」といった別名で保存し、再び作図ファイル「map_1000x750.jpg」において登山コースを描く。
  3. 登山コースを描き、さらに必要な文字情報を書き加え、登山コース地図を完成させる。

以上の説明から明らかなように、一つの登山コース地図が完成するまでに3つの画像ファイルを作っている。つまり、便宜上

と名付けた3つの画像ファイルである。


ステップ4:必要であれば画像サイズなどを変更する

作図に関わる追加的な情報も書いておこう。 当サイトが利用している無料ホームページ・スペース(FC2)の場合、ファイルサイズが1メガバイトを越えてはならないという制約があり、ファイルサイズを小さくしたい状況になることは多々ある。そのような場合の対処法である。 JPEG形式の画像が前提となるが、2つほど考えられる。一つの方法は画像サイズを小さくすることである。別の一つは、画像サイズを変えずに、画像の品質を低下させる方法である。これら2つの方法を組み合わせれば、 画像のサイズや品質を見苦しくない程度に保ちつつ、ファイルサイズを小さくすることができる。


追加情報(1)

GIMP2関連のサイトをリストアップしておこう。

追加情報(2)

新しいバージョンのカシミール3Dには登山コースを書き加える機能が加わったようだ。その機能を使う場合は、完成までの作業手順が異なってくるが、どのようにしたら良いかは自明であろう。 登山ルートを書き加える機能に関するページとしては、カシミール・はじめの一歩シリーズ登山ルートと断面図がある。


地図ショッピングサイト

一般的な第1の手法では、登山コース地図に適した地図画像を入手する必要がある。 そのような地図入手源として幾らかの地図ショッピングサイトを紹介しておこう。 いろいろな数値地図が販売されていることから、どの地図を購入するか迷うかも知れない。 繰り返しになるが、上に示すような登山コース地図であれば、「数値地図50000(地図画像)」と「数値地図25000(地図画像)」に限定し、どれを購入するのか決めればよい。ただし、CDーROM版を買うこと。

数値地図50000(地図画像)と数値地図25000(地図画像)との間で、いずれを購入するのかに関し、重要な情報を追加しておこう。 まず、両者のスケールを実感してみよう。 冒頭に示した地図は5万分の1の地図である。 一方、2万5千分の1の地図はこんな感じになる。 次は価格に関わることだ。地図画像の購入に多額の出費をしたくないのであれば、「数値地図50000(地図画像)」の購入が考えられる。その理由は2つほどある。 (1)まず、インターネットや山行記録集への掲載といった用途であれば、ほとんどの場合、5万分の1のスケールで十分である。地図がむやみに大きくならないのが良い。2万分5千分の1の地図では、地図を縮小することが多くなる。 (2)また、5万分の1の地図画像を2倍に拡大して表示すると2万5千分の1のスケールになる。等高線などが少し不鮮明になるものの、使用に十分耐える。 表示倍率は連続的に調整できるので、希望するスケールにすれば良い。これは数値地図ならではの便利な性質である。

なお、カシミール3D専用の地図入手源として山旅倶楽部オンライン地図がある。これは「サービスの購入」であり、ライセンスの有効期間だけ利用できる。 したがって前述のプロセスを経て作った登山コース地図もライセンスの有効期間だけ使用できることになる。そういった意味で注意が必要である。詳しくはよくある質問と回答を参照。

画像入手の要点をまとめておこう。冒頭に示すような登山コース地図を作成する場合は、刊行物としての地図画像を「買取りの形」で入手するのがベストである。

話が横道に逸れるが、登山に携帯する紙媒体の2万5千分の1の地図は、地図印刷の無料ソフト「TrekkingMapEditor」を使って印刷すればよい。

追記(2012年7月29日):このページの作成後に、「TrekkingMapEditor」の無料版がなくなったことを知る。現在は有料版が提供されている。 一方、無料で登山用地図を印刷するための別の方法も示されている。いずれにせよ、上のウェブページ「TrekkingMapEditor」から最新の情報を入手するのが良い。


電子国土ポータルを利用する手法

前述の第1の手法は一般的と思われる手法であり、多少の違いがあるものの、多くの人々に利用されている手法であろう。 その一方で、地図画像の入手を含め、全く異なる別の手法もある。(1)無料の地図画像を使う。(2)カシミール3Dは使わない。(3)一般の画像編集ソフトも使わない。したがって根本から異なる手法である。

そのような作図手法とは電子国土ポータルを利用することだ。 この第2の手法は、作図に関わる機能が貧弱であり、便利であるとは言い難い。さらに次のような制約もある。 利用ルールの関係から、「電子国土」「規約」「データ」のロゴマークを入れた地図にする必要がある。 詳しくはQ&AのQ5-6「電子国土Webシステムで表示される背景地図や作図パネルで作成した重ねあわせ情報を表示したものを印刷したり、冊子に載せるなどして使いたいのですが?」を参照のこと。

この手法において守らなければ成らない条件を明記しておこう。

第1の制約は、国土地理院が提供する地形図閲覧システム「ウォッちず」の地図画像が使えないこと、一般の画像編集ソフトを使って作図ができないこと、等々を意味している。 第2の制約は既に述べたとうりである。

それでは第2の手法に関する基本的なステップだけを簡単に説明する。

  1. ブラウザーを起動して電子国土ポータルの作図パネルへアクセスし、目的とする場所を表示する。目的とする場所を2万5千分の1地形図ぐらいのスケールで表示するのに時間がかかるが、根気よく行う。
  2. 電子国土ポータルの作図パネルにおいて、登山コースや文字情報を書き加える。例えば登山コースを描く場合は、作図メニューから「線」を選び、マウスでチョンチョンしながら線を描き、ダブルクリックで線画を終わる。このようにして追加情報の書き込みを完成させる。
  3. 作図が完成したところで、キーボードのPrtScrキーを押してモニター画面全体をコピーする。
  4. Windows標準付属ソフト「ペイント」を起動して白紙を開いた状態において「編集」→「貼り付け」を選び、コピー画像を貼り付ける。モニター画面全体が貼り付けられるので、必要な部分だけを取り出す作業へ入ることになる。
  5. ペイントの作図メニューから「選択」を選び、必要な矩形範囲を選ぶ。このとき「電子国土」「規約」「データ」のロゴマークを選択範囲に入れておくことが利用ルールの関係から求められる。
  6. 選択範囲をコピーしてから「ファイル」→「新規」へと進み、新規ファイルを作るプロセスへ入る。このとき「無題への変更内容を保存しますか」と聞かれるので「保存しない」と答える。
  7. 再び白紙を開いた状態において「編集」→「貼り付け」を選び、コピーした選択範囲を貼り付ける。
  8. 「上書き保存」や「名前を付けて保存」を選び、例えば「map1.jpg」といったファイル名で保存する。

電子国土ポータルの作図パネルにファイル保存機能があれば話が簡単なのだが、それが無いので、上に示すような込み入った手順になっている。 必要な部分だけを取り出して保存するための画像編集ソフトは「ペイント」に限らなくても良いことは自明であろう。


国土地理院への承認申請

いずれの作図手法であれ、「国土地理院の測量成果を利用した地図」をインターネット等で一般に公開する場合は、国土地理院に対して承認申請が必要になる。 もちろん、白地図や外国の地図など、国土地理院の測量成果を利用しない地図の場合は承認不要である。 さらに国土地理院の測量成果を利用した地図であっても、「私的な利用」であれば、承認を必要とせず自由に使える。 しかし、インターネット等で一般に公開することは、私的な利用範囲を越え、承認申請の対象になってくる。 詳しくは次の関連ページに記載している。


登山道マップ作成に関するウェブページ

登山道マップ作成に関するウェブページを参考までにリストアップしておこう。 この種の資料はインターネット上に数多く存在すると思っていたが、調べた時点では意外と少なかった。



更新日:2011年5月24日



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