白神山地横断ルート図
白神山地を東西に横断することを想定し、そのためのルート図を作ってみた。
このようなルート図の作成を思いついた当時は、公共機関発行のルート略図が一般的であり、特に山越えルートがハッキリしないものが普通であった。
このようなことから山越えルートに焦点を置いた詳細なルート図をつくることを思いついた。
その後、ウェブサイト「山釣り紀行」の白神山地源流の滝などにおいて鮮明なルート図を見かけるようになり、参考になる点が多かった。
実際に歩いた区間もあれば、そうでないところもある。
ルートに関する経験的な知識を蓄積し、必要に応じてルート図を修正する予定である。
この山域の全体像を得るためには、当サイトの白神山地沢歩きマップが役立つと思う。
以下には全体の山域を9つの区画に分け、2万5千分の1地形図によって各区画を示している。
下に示す地図画像をクリックすると原寸大(2134x2000)で表示できる。
原寸大の表示では地図画像がモニターからはみ出す如くに映し出される。
白神岳(南西) 白神岳、ウズライシ沢
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白神岳(南東) クマゲラの森、ヤナダキ沢
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川原平(南西) 西股沢(フガケ沢)、暗門滝
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二ツ森(北西) 津梅川、追良瀬川源流域、逆川
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二ツ森(北東) 滝川、赤石川上流
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冷水岳(北西) 赤石川上流、大川上流
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二ツ森(南西) 真瀬川源流域、真瀬岳、滝川源流域
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二ツ森(南東) 滝川源流域、二ツ森、泊り沢源流域
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冷水岳(南西) 赤石川源流域、大川源流域
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暗門〜西股沢〜赤石川の区間
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暗門第一の滝のところには右岸に巻き道がある。木の根などを掴みながら岩肌の急斜面を60mほど登って尾根を乗り越え、25mほど下ると西股沢(通称フガケ沢)へ降り立つ。
そこはテント数張りを設置できるほどの大きな広場になっている。
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西股沢を遡行し、標高484mのブカケノ沢出合いから1.5Kmのところに来ると、その旨を記した標柱が左岸にある。ここもテント場に適した広場になっている。
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標高484mのブカケノ沢出合いもテント場に適した広場になっている。
右股・ブカケノ沢を遡行すると、脆い地形に滝が2つほどあり、滝を乗り越えるのが困難。
このような事情から「モックリの上げ」と呼ばれる巻き道が中間尾根に着いている。
モックリの上げでは標高570mまで登り、尾根斜面をトラバースし、ブカケノ沢の標高555mあたりへ降り立つ。
ブカケノ沢へ降り立つ地点は水流のあるV字谷の枝沢の出合いである。
この枝沢から20mほど上流にもV字谷の枝沢がある。
したがって上流から下流へ向かって来る場合は、右岸に2つのV字谷の枝沢が20m間隔で現れたところで、2番目の沢出合いに踏み跡を見つける。
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ブカケノ沢を辿って郡界尾根へ向かう途中には1:1の二股がある。進むべき左沢が直角に折れ曲がっているので、ここのところは直進しないようにすること。地図とコンパスで進むべき方向を確認すること。
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ブカケノ沢を辿って標高570mぐらいまで進むと、郡界尾根の標高630m鞍部へ向かって延びた枝沢がある。
この枝沢の出合いには1mほどの段差がある。
したがって標高570mぐらいで、そのような沢出合いが左岸に見えれば、そこが郡界尾根への登り口となる。
実際の登り口は沢出合いから10mほど下流側にある踏み跡となる。
踏み跡は枝沢の左岸に沿って延びており、標高610mぐらいで枝沢の中へ入る。
その枝沢を直進的に辿って行くと、標高630mの鞍部に着く。そこには現在地点を示す地図案内板が立っている。
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郡界尾根からヤナダキ沢へ向かう道筋を辿り、標高550mぐらいまで来ると、「美人ブナ」と呼ばれるブナの大木がある。
その傍には湧水がチョロチョロ程度に流れている小沢がある。
美人ブナのところからは小沢を100mほど辿り、沢筋が不鮮明になったあたりで沢の右岸側へ延びている踏み跡を辿る。
その後、道筋は複数の小沢を渡り歩くような形で延びている。やがて標高480mぐらいでヤナダキ沢へ出る。
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郡界尾根からヤナダキ沢へ出る地点は標高480mぐらいであるが、そこはヤナダキ沢の流れが伏流となる区間の上端あたりになる。
したがってヤナダキ沢を遡行してきた場合は、標高480mぐらいで伏流の区間になると、踏み跡が近いことになる。
伏流の区間が終わり、再び水流が見え始めたあたりで、左岸に踏み跡を見つける。
ただし、水量の多い春は伏流の区間がないかも知れない。
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郡界尾根からヤナダキ沢へ出る地点から10mほど上流側へ行くと、ヤナダキ沢からクマゲラの森へ行くための道筋が右岸に見える。
そこの左岸にはマタギ小屋跡地がある。マタギ小屋跡地は沢から1mほど上がった平坦な台地になっている。
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ヤナダキ沢からクマゲラの森へ行く道筋は小さな尾根を3つ横切る形で延びている。
尾根から沢筋へ、沢筋から尾根へと移動するので、道筋が鋭角状に曲がったりしている。
したがって道筋を見失わないように注意する必要がある。
標高585mぐらいで最高点となり、やがてクマゲラの森へ下って行く。
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クマゲラの森の中心部を通り過ぎ、標高490mぐらいまで下ると、湧き水が流れ出している沢がある。
この湧き水のところからは沢を辿って赤石川へ向かう。
標高435mまで下ると、沢を辿るルートと、右岸の踏み跡を辿るルートとが分岐している。
そこは沢がゴルジュ的な地形となる地点でもある。
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沢を辿って赤石川へ出るルートは、高さ5mほどの崖に食い込んだV字谷の小沢から赤石川へ出る。
逆方向、つまり赤石川から沢伝いにクマゲラの森へ行く場合は次のようになる。
まず、高さ5mぐらいの崖に白糸の滝が見える地点へ行く。
細い水流が数本に分かれている白糸の滝である。
その滝から10mほど下流側には水流のあるV字谷の小沢が見え、1mほどの段差から水が流れ落ちている。
この沢出合いが沢伝いにクマゲラの森へ行く場合の入口となる。
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一方、標高435mぐらいの分岐において右岸の踏み跡を辿ると、沢ルートから大きく離れるようになる。
やがて赤石川へ出るが、そこはテント場適地となっている。
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赤石川の下二股あたりにはテント場適地が多く点在している。
白神で一番美しいと言われているテント場は、下二股から本流を350mほど上流へ行ったところにある。
そこは赤石川がカーブし、岩庭のような風景が広がっている。そこの左岸にテント場適地がある。
赤石川〜滝川〜ニシノ沢〜逆川〜追良瀬川の区間
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ニシノ沢(西の沢)の下流では小滝が連なる巨岩ゴーロ連瀑帯が延々と続く。
そのような区間を通り過ぎると一転穏やかとなるが、その後も小滝が続く。
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ニシノ沢(西の沢)を標高680mあたりまで登り詰めると、右手の尾根斜面(粘土質の斜面)に幅1mほどの枝沢が食い込んでいるのが見える。
その枝沢を辿ると藪こぎ無しで尾根上(標高725m)に出ることができる。
後は尾根斜面を下って逆川の枝沢に出る。
この尾根越えルートよりも200mほど北側にも別の尾根越えルートがある。
南側の尾根越えルートはクラブ・アルピノ・リベルタのルート図(PDF)に基づき、
北側の尾根越えルートはウェブサイト「山釣り紀行」のルート図に基づく。
追良瀬川〜ウズライシ沢〜白神岳の区間
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追良瀬川堰堤〜ウズライシ沢出合いの区間は10Kmぐらい。
この区間は追良瀬川本流であるので、ルートファインディングの問題はない。
ウズライシ沢出合いは標高430mぐらいにあり、そこには大きな釜がある。
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ウズライシ沢を遡行する場合は、どちらへ進むのか判断に悩む二股がある。
4つの二股があり、いずれも左股、左股ヘと進む。
特に標高865mぐらいの二股においては右股が明るいため右股へ進みやすいようだ。
いずれにせよ、沢の二股では地図とコンパスで進むべき方向を確認すること。
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標高430mぐらいで追良瀬川からウズライシ沢へ入る。
標高460mぐらいに第1の二股があり、右股は玄関岳へ向う。
左股が本流であり、左股へ進む。
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第1の二股の上流側ではゴルジュが続き、ゴルジュを抜けると第2の二股に着く。
第2の二股では右股が明るく開けた沢であり本流に見えるが、それは玄関岳へ向う。
ここも左股が本流になる。
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第2の二股の上流側では水量の豊富な細沢が右岸から合流し、標高865mぐらいで第3の二股に着く。
第3の二股では右股が明るいため本流に見える。しかし、左股が本流であり、左股へ進む。
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第3の二股の上流側では水量の多い細沢が右岸から合流し、標高1000mぐらいで伏流となり、標高1075mぐらいで第4の二股に着く。
ここまで登ると白神岳の稜線が見えてくる。
ここも左股が本流であり、左股へ進む。
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第4の二股の上流側では水量の多い本流を進む。やがて標高1200mぐらいで水場となる。
山頂の避難小屋からも水汲みに来る場所であり、小屋から5分ほどの距離にある。
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標高1200mの水場の上側には最後の分岐があり、ここは右へ進む。
しっかりした踏み跡を辿り、山頂脇の登山道へ出る。
津梅川〜小又沢〜カンカケ沢〜黒滝沢〜追良瀬川の区間
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ウェブから得られるこのルートの情報は極めて少ない。そういった状況の中で、ウェブサイト「山釣り紀行」の白神山地源流の滝には多くの役立つ情報が含まれている。
カンカケ沢・黒滝沢経由の山越えルートとしては、標高830mの鞍部を越える南側ルートと北側ルートとが示されている。
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この二つのルートを比べた場合、南側ルートの方が比較的容易なルートと言える。
ところが、南側ルートの方はルートファインディングに苦労するような地点がある。
それはカンカケ沢の標高400mぐらいの二股である。
標高830mの鞍部からカンカケ沢へ延びている支沢は伏流となっているが、その伏流が標高400mぐらいの二股で湧水として流れ出す。
その流通経路が曲者であるので、二股あたりの全体構造をモデル化しよう。2本の尾根がV状に出合い、その中間の谷に伏流が流れている。
伏流はVの右尾根の下を潜って右股から湧水として流れ出している。このような構造を知らなければ、当然のこととして湧水が流れている右股を進むことになるが、それでは別の沢を登ることになってしまう。
伏流が流れている中間谷への入口は、湧水が流れている右股ではなく、左股の方にある。したがって二股では左股へ入る。
Vの左尾根は左股では右手側の尾根となるが、その尾根に狭い沢が見えてくるので、その狭い沢を進む。
狭い沢を通って尾根を通過すると、大きく開けた谷となり、それが伏流の沢である。その後は伏流の沢を登り、標高830mの鞍部を目指す。
一方、左股をそのまま進むと、それは前述の北側ルートとなる。
このような情報は、このルートを通った経験者から聞いた話である。
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標高830mの鞍部を越えて黒滝沢を下って行くと、標高640mぐらいには変形した三股がある。
さらに標高600mぐらいには黒滝(2段30m)がある。黒滝には右岸に高巻きルートがある。左岸は絶壁である。
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カンカケ沢・黒滝沢経由の山越えは、10時間から11時間ぐらいかかり、2日がかりで山越えをしている山行記録が多い。
その一方で、健脚の3人ほどの少人数では7時間ほどで山越えをしている山行記録もある。
津梅川〜大又沢〜ウズライシ沢の区間
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津梅川の大又沢源流部からウズライシ沢へ山越えをする場合、804mピーク脇の標高の一番低い鞍部を通ることが考えられるが、
その鞍部からウズライシ沢へ下る枝沢では、30mロープではとどかない高い滝が出てくる。
したがって、その隣の枝沢にルートを取ることが考えられる。
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大又沢右岸には石炭運搬のために設けられた軌道の跡が残っている。
いまは山菜採りの人などが利用している踏み跡として残っている。
大又沢と小又沢との合流点より少し下流側にある第3堰堤のところの右岸から踏み跡が始まる。
標高500mぐらいで3つの沢が合流する「下十文字」と呼ばれている地点まで踏み跡が延びている。
始点から終点まで3時間半ほどかかる。
赤石川〜泊り沢〜滝川の区間
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泊り沢の入り口から約1.3Kmほど上流には旧魚止め滝(5m)があり、さらに700mほど行った標高650mぐらいには泊り沢最大の滝(25m)がある。
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泊り沢〜滝川の間は標高896mの鞍部を越える。赤石川上二股から分水尾根へは約3Km、分水尾根からアイコガの滝へは約4Kmある。
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滝川の源流域にある大滝(30m)には左岸に高巻きルートがある。この滝については2段40mといった記述もある。
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滝川の標高620mぐらいのところにはゴルジュがあり、標高560mぐらいの滝(10m)には左岸に高巻きルートがある。
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滝川の標高510mぐらいにはアイコガの滝(3段15m)があり、左岸に高巻きルートがある。アイコガの滝は水際を直登することもできる。
大川〜オリノ沢〜イシノコヤバ沢〜赤石川の区間
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「タカヘグリ」と呼ばれる大川のゴルジュにおいては、最も狭まったところが通行のネックになることがある。
ここの水深は年によって大きく異なり、泳いで渡る年もあれば、膝までの水深の年もある。
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タカヘグリには迂回路がある。それは大川左岸の尾根にある踏み跡ルートであり、かってのマタギ道である。
地元の人々(かってのマタギ)が時たま利用している程度であり、現在は藪化している。
この迂回路は万一のときに役立つかもしれないので、その存在ぐらいは知っておくのが良い。
常徳沢のところから尾根へ登り、尾根の脊に沿ってタカヘグリを高巻き、オリサキ沢のところから大川へ戻る。
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オリノ沢は「オロの沢」、イシノコヤバ沢は「石の小屋場沢」と記載されていることがある。